2011/01/22

ヴィヴ・アルバーティンが PledgeMusic でアルバムのマスタリング資金調達中

Viv Albertine by mattwareham
Viv Albertine, a photo by mattwareham on Flickr.

ヴィヴ・アルバーティン(Viv Albertine)が PledgeMusic でファースト・ソロアルバムのマスタリング資金を募っています。アルバムに収録予定の10曲は既に録音が済んでおり、今回募っているのはマスタリングのためのミキサー、エンジニアに支払う費用です。

The most exciting thing in the world! My Pledgemusic account has gone live! http://www.pledgemusic.com/projects/vivalbertine#project1月22日 via Twitter for iPhone

PledgeMusic について知らない人も多いと思うので簡単に説明します。これは音楽アーティストのための資金調達サイトで、アルバムの製作やツアーの元手として必要なお金をレコード会社などから得られない(あるいは足りない)とき、アーティストは資金提供者を公募、これに対しファンが直接資金の提供者となる仕組みです。資金提供と言うとおおげさに聞こえますが、実際は一口1,000円くらいから、予約販売に似た気軽さで参加できるものです。

PledgeMusic では資金拠出の確約を「Pledge」と呼んでいます。たとえば今回のヴィヴのマスタリング資金プロジェクトでは、2500英ポンド(現在のレートで約33万円)が目標額です。一方ユーザーは、最も安いプランだと8ポンド(1,000円ちょっと)で Pledge できます。支払い方法はクレジットカードです。ただし、Pledge した金額が即座に引き落とされるわけではなく、一定期間内に Pledge の総額が目標金額に達しなければプロジェクトは「お流れ」となってしまい、支払いは発生しません。このあたりはグルーポンなどの共同購入サイトに似ています。

Pledge 総額が目標に達すると、集まった資金が PledgeMusic からアーティストへ支払われます。アーティストはそのお金を使ってアルバムを製作したり、ツアーへ出たりします。普通の投資だと、CD やコンサートなどの売上で得られた利益から配当を得るものですが、PledgeMusic の場合ちょっと違います。

あなたがもし、前述のヴィヴのプロジェクトに対し8ポンドの Pledge をした場合、得られるのはそのアルバムを無料でダウンロードできる特典です。Pledge 金額によって特典の内容は違い、もうちょっと出すとサイン入りのCDやTシャツ、手書きの歌詞カードなどが送られてきます。ですからファンから見れば料金先払いの予約販売みたいに見えるわけです。ちなみにヴィヴのプロジェクトの最高額は一口200ポンドで、これにはヴィヴがロンドンの自宅で開催する手料理付きプライベート・コンサートへの招待が付いてきます。「ヴィヴの自宅コンサート?知人を集めて?ということはひょっとして生ヴィヴだけじゃなくテッサとかミック・ジョーンズとかキース・レヴィンが来るかもしれないってこと?」という夢が見られます。なお、Pledge にどのような特典が付くかは、アーティストやプロジェクトによってさまざまです。

アーティスト側から見た仕組みもざっと説明しておきます。アーティストはまずアルバムを作るとか、どこそこでコンサートをするとかの具体的な「プロジェクト」の内容とそれに必要な金額を提示しなければなりません。それが PledgeMusic に承認された後、資金の公募が始まります。公募は金額によって30日、60日、90日のいずれかの期間が設けられます。決められた期間内に目標金額に達しなければ「お流れ」となります。期間内に目標金額に達すればアーティストは資金を得られますが、金額の15パーセントを手数料としてあらかじめ差し引かれます。残りの金額の75パーセントは即座に支払われますが、残りの25パーセントはプロジェクト自体の完了後となります。

共同購入クーポンや予約販売に似たもの、とは言ってもやはり一種の「投資」には違いないので、リスクはあります。たとえばバンドが資金を得てアルバムを作り始めたものの、完成前に解散してしまったとか、資金を持って夜逃げしてしまった。なんてことがあるかもしれません。その場合 PledgeMusic 側は Pledge した人に状況を知らせ、アーティストに対しては資金の返還要求などの手続きをおこないますが、金額分の対価が必ず得られるという保証をしてくれるわけではありません。詳しくは FAQ のページで確認してください。

もうひとつ。まだ作られていない、当然試聴もできない作品の製作に出資するわけですから、内容の保証はありません。出来上がった作品がいかに「とほほ」な出来であったとしても、お金は返ってきません。もちろん「すごくいい出来」だった場合は「自分がこの作品の製作に貢献したんだ」という満足感が得られます。ささやかな投資の醍醐味というものです。

あ、それから間もなく発売のギャング・オブ・フォー(Gang of Four)のニューアルバム「Content」は PledgeMusic での資金調達によって作られたものです。この種の資金調達法によるアルバム製作は、これから急速に増えそうです。

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